4変数の平方和
発端は初等整数論講義に出てきた次の公式 (添え字は四元数の表現に合わせて修正)
\( \begin{eqnarray} && \left( x_0^2+x_1^2+x_2^2+x_3^2 \right) \left( y_0^2+y_1^2+y_2^2+y_3^2 \right) \\
&=& \left( x_0 y_0 + x_1 y_1 + x_2 y_2 + x_3 y_3 \right)^2
+ \left( x_0 y_1 \,-\, x_1 y_0 + x_2 y_3 \,-\, x_3 y_3 \right)^2 \\
&& \left( x_0 y_2 \,-\, x_1 y_3 \,-\, x_2 y_0 + x_3 y_1 \right)^2
+ \left( x_0 y_3 + x_1 y_2 \,-\, x_2 y_1 \,-\, x_3 y_0 \right)^2 \tag{A}\\
\end{eqnarray}\)
この公式の見通しを良く出来ないか考えていたところ、四元数との関係に気付いたので記録しておく。
2変数版
2変数で類似の公式を複素数で示せる。これを四元数に拡張すると目的が果たせる。まずは2変数版を示す。\( x=x_0+x_1 i,\ y=y_0\,+\,y_1 i \) とおくと、\( |x|^2|y|^2=\left( x_0^2+x_1^2 \right) \left( y_0^2+y_1^2 \right) \) である。一方、次のようにも計算できる。
\( \begin{eqnarray}
|x|^2|y|^2
&=& x \overline{x} y \overline{y} \,=\, xy \overline{xy}\\
&=& \left( ( x_0y_0 \,-\, x_1y_1)+(x_0y_1+x_1y_0) i \right)\\
&& \times \left( ( x_0y_0 \,-\, x_1y_1) \,-\, (x_0y_1+x_1y_0) i \right) \\
&=& ( x_0y_0 \,-\, x_1y_1)^2+(x_0y_1+x_1y_0)^2\\
\end{eqnarray}\)
以上により次式を得る。
\( \begin{eqnarray}
\left( x_0^2+x_1^2 \right) \left( y_0^2+y_1^2 \right)
&=& ( x_0y_0 \,-\, x_1y_1)^2+(x_0y_1+x_1y_0)^2
\end{eqnarray} \)
\( y \) の代わりに \( \overline{y} \)、すなわち \(y_1\) の代わりに \(-y_1\) を適用すれば、上式は次のようになる。
\( \begin{eqnarray}
\left( x_0^2+x_1^2 \right) \left( y_0^2+y_1^2 \right)
&=& ( x_0y_0 \,+\, x_1y_1)^2+(x_0y_1\,-\,x_1y_0)^2
\end{eqnarray} \)
四元数
四元数について簡単にまとめておく。四元数は3つの虚数単位 \(i,j,k\) を用いて \( x=x_0+x_1i+x_2j+x_3k \) と表される複素数の拡張であり、四元数全体は非可換体を成す。虚数単位の性質は以下の通り。
(1) \( i^2=j^2=k^2=-1 \)
(2) \( ij=k, jk=i, ki=j \)
(3) \( ij=-ji, jk=-kj, ki=-ik \)
\( i,j,k \) が循環している構成されていることが分かる。共役は
\( \overline{x}=x_0-x_1i-x_2j-x_3k \)
で定義される。積の共役は次の性質を持つ。
\( \overline{xy} = \overline{y}\,\overline{x} \)
¥(x¥) のノルム \( |x| (\geq 0) \) は
\( |x|^2= x\overline{x} = \overline{x}x =x_0^2+x_1^2+x_2^2+x_3^3 \)
で与えられる。
4変数版
複素数の場合と同様に、四元数のノルムを2通りに表して等式を求める。
\( \begin{eqnarray}
|xy|^2
&=& xy \overline{xy} \,=\, xy \overline{y}\,\overline{x} \,=\, x |y|^2 \overline{x}
\,=\, x\overline{x} |y|^2 \,=\, |x|^2 |y|^2 \\
&=& \left( x_0^2+x_1^2+x_2^2+x_3^2 \right) \left( y_0^2+y_1^2+y_2^2+y_3^2 \right)
\end{eqnarray} \)
ここで、\( |y|^2 \) が実数であり、可換であることを用いた。
\( \begin{eqnarray}
|xy|^2
&=& \left| (x_0y_0 \,-\, x_1y_1 \,-\, x_2y_2 \,-\, x_3y_3 ) + (x_0y_1 + x_1y_0 + x_2y_3 \,-\, x_3y_2 ) \right. i \\
&& + \left. (x_0y_2 \,-\, x_1y_3 + x_2y_0 + x_3y_1 ) j + (x_0y_3 + x_1y_2 \,-\, x_2y_1 + x_3y_0 ) k \,\right|^2 \\
&=& \left( x_0y_0 \,-\, x_1y_1 \,-\, x_2y_2 \,-\, x_3y_3 \right)^2+ \left( x_0y_1 + x_1y_0 + x_2y_3 \,-\, x_3y_2 \right)^2 \\
&& + \left( x_0y_2 \,-\, x_1y_3 + x_2y_0 + x_3y_1 \right)^2 + \left ( x_0y_3 + x_1y_2 \,-\, x_2y_1 + x_3y_0 \right)^2
\end{eqnarray} \)
以上により、次式が得られた。
\( \begin{eqnarray}
&& \left( x_0^2+x_1^2+x_2^2+x_3^2 \right) \left( y_0^2+y_1^2+y_2^2+y_3^2 \right) \\
&=& \left( x_0y_0 \,-\, x_1y_1 \,-\, x_2y_2 \,-\, x_3y_3 \right)^2+ \left( x_0y_1 + x_1y_0 + x_2y_3 \,-\, x_3y_2 \right)^2 \\
&& + \left( x_0y_2 \,-\, x_1y_3 + x_2y_0 + x_3y_1 \right)^2 + \left ( x_0y_3 + x_1y_2 \,-\, x_2y_1 + x_3y_0 \right)^2
\end{eqnarray} \)
\(y\) を \( \overline{y} \) で置き換えると目的の等式 (A) が得られる。