大学の教員公募で女性教員に制限したり、女性教員を優先するものが時折見られる。文科省の要望であり、協力を申し出るとそれなりに支援金がいただけるようだ。本学も参画して資金をいただいていた。本学で実際に目にしてきたことをちょっと書いてみる。
地方大学のためか女性教員どころか男性教員でも応募が少なかったりして希望するような人材が見つからず、人事はしばしば難航したようだ。特に教授募集の場合は既に家庭を持っている世代が多く、地方への異動をためらうようだ。実際に応募してきた教員が面接の直前になって、家族の同意が得られなかったと辞退してきた事例もあった。助教なら職に困っている研究者が大勢いて、応募が殺到してもおかしくなさそうだ。しかし、募集に条件を付けるとかなり少なくなり、失敗に終わることもあった。そもそも応募の少ない大学で、女性を優先的に採用しようというのが無理な話だったようだ。
教授会の後、学部長から各学科の代表者は残るように言われて私は残った。女性教員の採用が思うように進んでおらず、実績が報告出来ない状況を説明された。苦肉の策として、内部の女性助教を准教授に昇進させることが審議された。その助教は定年に近い年齢であった。他の教員から業績に問題はないか質問が出た。学部長は業績は教授級だと答えた。質問者は安心したように見えた。僅かなお金のために達成困難なプロジェクトに応募するのは今後慎むべきではないかという意見が出された。
候補者の業績を議論したことは重大な問題だったのだろうか。教授の条件を満たすほどの教員を定年間際まで助教のまま放置しておいたことの方が問題だろう。教授の業績条件を満たしても、教授ポストが資格者より少なければ教授になれないことはある。しかし、教授の基準を満たしても定年近くまで助教のまま放置されることは異常である。人事が学部に提出されるのは昇進候補者だけなので、他学科は候補として選出されなかった教員の事は分からない。学部は候補者の選定は各学科にまかせ、提出された候補者だけを審議する。不当に昇進を妨げていることに対するチェック機能は学部には無かった。だから、過去にも昇進を妨げられ続けて他大学の教授になった後で業績をチェックしたら想像を超えた業績が判明したこともあった。私も初めに所属していた部署では研究業績に関係なく教授にしないと言われ、他の部署に移っての昇進になった。この女性教員が助教のままだった理由は明らかにされていないが、女性だからという理由で保留され続けたとしたら男女共同参画以前の問題だと思う。